プリプリ「M」はなぜシングルA面ではなかったのか?名曲誕生の知られざる歴史と制作裏話を徹底解説
『M』が単なる失恋ソングの枠を超え、何世代にもわたって聴き手の胸を締め付け続ける理由は、徹底して具体的なディテール描写にあります。
「いつも一緒にいたかった となりで笑ってたかった」「あなたのキスを思い出す 杏仁豆腐の味がした」
「消せないアドレス Mのページを指でなぞるだけ」
特に聴く者の心を抉ったのが、「消せないアドレス」というフレーズです。現代のようにスマートフォンで連絡先をワンタップで削除・ブロックできる時代とは異なり、1980年代後半のアドレス帳は紙の手帳でした。ペンで直接書き込まれ、何度もめくられたアルファベットの「M」のインデックス。インクを消すこともできず、ページを破り捨てる勇気もないまま、ただ指先でなぞることしかできない無力感。この物理的な質感を持った痛みが、リスナー自身の過去の記憶とダイレクトに結びつきました。
また、長年ファンの間で議論を呼んできた「イニシャルの正体」についても、後に富田自身によって明かされています。相手は当時交際していたミュージシャンの男性でした。別れの理由は多忙によるすれ違いでしたが、実名ではなくただ一文字「M」としたことで、楽曲は富田個人の私小説から、世界中に存在するあらゆる「M」に恋をした人々のための共通言語へと進化したのです。
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