円城塔『これはペンです』は何が凄い?芥川賞候補作のあらすじと難解さを徹底解説
第145回芥川龍之介賞の選考において、『これはペンです』ほど選考委員の価値観を根本から揺さぶった候補作は稀でした。当時の文壇を代表する選考委員たちの評価は、まさに真っ二つの賛否両論に分かれました。
ある選考委員は「言葉そのものを主人公にした現代小説の極北」「理知的な構築美による大傑作」と絶賛し、従来の私小説的な情念に縛られていた日本文学を革新する旗手として円城塔を激賞しました。一方で、リアリズムや人間の生々しい感情のドラマを重視する側の選考委員からは、「登場人物に血が通っていない」「単なるアイディアの展開であり、小説としての肉体性を欠いている」といった痛烈な批判が浴びせられました。
| 選考・評価の論点 | 肯定派の視点(革新性) | 否定派の視点(伝統的文学観) |
|---|---|---|
| 登場人物の造形 | 身体を文字に還元する斬新なキャラクター概念 | 人間味や情念のリアリティが希薄で感情移入不能 |
| プロットと構成 | チューリングテストと言語学を融合した高度な論理構築 | ドラマツルギーの欠如、知的遊戯の域を出ない |
| 現代文学史上の意義 | デジタル情報化時代を予見したポストモダン文学の頂点 | 純文学の王道から逸脱した一種のSFパズル |
この激しい落選劇とその後の反響は、結果として円城塔という特異な才能を広く知らしめる契機となりました。後に『道化師の蝶』で第146回芥川賞を受賞することになりますが、文学的野心と純粋な実験精神の密度において、『これはペンです』こそが円城文学の最高到達点であると推す文芸ファンは少なくありません。
Tags:
これ は ペン です