海猿の主題歌はなぜ神曲揃い?シェネルとB'zの秘話と歴代全曲の衝撃事実を徹底解剖
数ある名曲のなかでも、今なお音楽ファンや視聴者の間で語り草となっているのが、連続ドラマ版の主題歌となったB'zの『OCEAN』と、シリーズ完結編を飾ったシェネルの『Believe』です。この2曲の誕生の裏には、制作陣とアーティスト双方の並々ならぬ覚悟と、前例のない挑戦がありました。
海上保安庁の巡視船「せっつ」で敢行されたB'z『OCEAN』の熱狂
2005年放送の連続ドラマ『UMIZARU EVOLUTION』は、映画第1作で潜水士の資格を得た仙崎が、実際の救難現場(第三管区海上保安本部・巡視船「ながれ」)に配属され、人命救助の過酷な現実と向き合う物語でした。このドラマのためにB'zが書き下ろした『OCEAN』は、雄大なストリングスと松本孝弘さんの泣きのギター、そして稲葉浩志さんの力強いボーカルが融合した珠玉のロックバラードです。
当時の制作関係者や報道資料によると、この楽曲のミュージックビデオ(MV)撮影は、海上保安庁の全面協力のもと、第四管区海上保安本部所属の実際の大型巡視船「せっつ」の甲板上で敢行されました。B'zの2人がヘリコプター発着甲板で激しい海風に吹かれながら演奏する映像は、ドラマ本編の過酷なロケ現場の空気感と完全に一致していたのです。歌詞に込められた「海に抱かれ ただようように」というフレーズと、どんな困難にも手を伸ばし続けるメッセージは、池澤真樹(仲村トオル)の殉職というドラマ最大の悲劇を乗り越える仙崎と吉岡哲也(佐藤隆太)の魂のテーマソングとして、視聴者の心に深く刻まれました。
海外アーティスト・シェネルが『Believe』に注いだ「日本語詞」への執念
そして2012年、シリーズ最終章となる映画『BRAVE HEARTS 海猿』において、制作陣は大胆な決断を下します。それまでの伊藤由奈さん、EXILEという国内トップアーティストの流れから一転、マレーシア出身・ロサンゼルス在住のR&Bシンガーであるシェネルさんを大抜擢したのです。
実はシェネルさんは、前年の2011年に日本の名曲を英語でカバーしたアルバム『ラブ・ソングス』(TEEの『ベイビー・アイラブユー』の英語カバー等)が大ヒットし、「ラブソング・プリンセス」として日本でブレイクを果たしていました。しかし、モデルプレス等のインタビューで本人が後に語っている通り、英語カバーのヒットの裏で、日本の音楽市場において「自身のオリジナル曲、それも日本語でどこまで通用するのか」という大きな挑戦と葛藤を抱えていた時期でもありました。
『海猿』制作陣からのオファーは、「海外アーティストでありながら、全編日本語詞のオリジナル・バラードを歌い上げてほしい」という極めてハードルの高いものでした。2012年4月16日の公式発表時、シェネルさんは『海猿』の過去作を鑑賞して大号泣したことを明かした上で、次のように力強いコメントを残しています。
「愛と勇気にあふれたこの素晴らしい映画に携わることができて本当に光栄です。この曲に私のすべてを注ぎました」(オリコン等の報道発表より引用)
英語のネイティブスピーカーにとって、日本語特有の母音の響きや、行間の感情を乗せるバラードの歌唱は至難の業です。しかし彼女は、ローマ字表記の歌詞カードに細かい発音や感情のニュアンスをびっしりと書き込んで猛特訓を重ねました。その結果生まれた『Believe』は、外国人シンガーならではの圧倒的な声量とソウルフルなフェイクを持ちながら、日本語の歌詞が一言一句クリアに胸へ突き刺さるという、J-POP史に残る奇跡の名曲となったのです。映画のクライマックス、ジャンボジェット機の海上着水という未曾有の事故から乗客全員を救い出した仙崎たちを包み込むようにこの曲が流れた瞬間、全国の劇場がすすり泣きに包まれました。